2021年度
2021年度は、ヒルサイドテラス、スパイラル、そして慶應義塾大学湘南藤沢キャンパスの3作品を研究対象としました。
慶應義塾大学湘南藤沢キャンパ
ス
研究チーム:
ハージェイ-・アラストゥー(政メM2)
伊藤皇貴(環境B4) 渋谷真紗子(環境B4)
横田幸亮(環境B2)
キーワード :
多様性と統合性, 視線の空間性, 内外空間の交流
槇文彦アーカイブの拠点となる槇文彦ルームは槇文彦氏自らがデザインした湘南藤沢キャンパス(SFC)メディアセンター内に開設された。キャンパスの中心にあるこの部屋はキャンパスの設計当初から槇文彦氏のデッサンにも描かれている。この場所では実際のキャンパスと槇文彦アーカイブの展示を見ることができるだけでなく、そこから実際にキャンパスへも繰り出して、この槇文彦建築を肌で感じることもできる。SFCは1992年にI~III期が、1994年にIV期が竣工しており、それ以来多くの学生生活の舞台となってきている。本展示はSFCで日頃から学生生活を送っている学生の視点からのこのキャンパスに関する分析を試みたものである。SFCには槇文彦氏の他のプロジェクトにも見られる様々な思想が、その設計やサイトプランから見受けられる。それは、SFCが建学の理念として掲げる、自立・分散・協調の理念に通じるものがある。本展示ではそれを
1. 多様性と統合性
2. 視線の空間性
3. 内外空間の交流
の3つの要素の視点から分析した。
代官山ヒルサイドテラス
研究チーム:
曹玲(政メM1)村松毅(環境B4)
アン・ヴィエット(環境B4)
野口 春佳(環境B3)坂口ほのか(環境B2)
キーワード :
時間の重層, 空間のひだ, 隠れた関係性
代官山ヒルサイドテラスは1967年から始まったプロジェクトである。「代官山集合住宅」とも呼ばれたこのプロジェクトは住居のみならず、レストランやオフィス、コンサートホールといった多彩なプログラムが集まり、豊かな空間を生み出している。また、街へ開いた建築は、内部空間のみならず、代官山という街の豊かさにも寄与している。加えて、ヒルサイドテラスは全6期、約30年という長い時間をかけて進んできた点も特徴的なプロジェクトである。このような長期プロジェクトの傍には、建築家である槇文彦氏と現オーナーである朝倉健吾氏がいた。慶應義塾をきっかけに出会った両氏は、今日まで「施主と建築家」以上に強固な関係性を築いてきた。
本展示では代官山ヒルサイドテラスという空間が何をもたらしたのか、これから何をもたらすのか、槇文彦氏の資料と朝倉健吾氏へのインタビューから紐解いてゆき、①空間のひだ②隠れた関係性③時間の重層という3つのテーマに沿った分析を示す。
スパイラル
研究チーム:
新井理久(環境B4)福島真実(環境B3)
木伏聖陽(環境B3)林明寿香(環境B2)
キーワード :
断片の建築的コラージュ , シーケンシャルな空間構成 ,都市生活者のコモンスペース
東京の南青山に位置するスパイラルはカフェ、レストラン、ギャラリー、ホール等さまざまな機能を持ち合わせる複合文化施設として1985年にオープンした。建物は地上9階、地下2階で構成されており、静的な空間から動的空間まで異なる特徴を持つ空間が重層するように一つの建物に共存している。用途を問わない自由度の高い空間では、展覧会、演劇、卒業制作展、読書会などスパイラルのコンセプトである「生活とアートの融合」を体現する幅広いジャンルのイベントが今日も開催されており、訪れるたび違う体験のある流動的な空間となってる。
私達はスパイラルを分析する視点をファサードに特徴的に現れた「断片の建築的コラージュ」、内部空間を連続的な変化で体験させる「シーケンシャルな空間構成」、青山通りを行き交う人々との視線の交錯や、自然に誘い込まれるカフェ空間に代表される「都市生活者のコモンスペース」から分析した。
謝辞
慶應義塾大学SFCと槇文彦ルームについて
SFC寄附講座「槇文彦建築とアーバニズム思想」について
槇文彦アーカイブは、槇文彦氏と槇総合計画事務所の.多大なご協力により実現しています。
また「槇文彦建築とアーバニズム思想」は株式会社竹中工務店様による寄附講座として開講しています。
ここに感謝の意を表します。
1858年に福澤諭吉により設立された慶應義塾大学の11あるキャンパスのひとつとして、神奈川県藤沢市に1990年に開設された湘南藤沢キャンパスは、槇文彦氏が全体計画と主要な建物を設計しています。そのキャンパス中央にあるメディアセンター4階に、槇文彦アーカイブの活動拠点として「槇文彦ルーム」を設置し、今後、活動の状況や保管資料の一部を展示および紹介していく予定です。
槇文彦アーカイブは、慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス寄附講座「槇文彦建築とアーバニズム思想」の以下の授業担当者によって運営されています。
政策・メディア研究科 特任教授 池田靖史
政策・メディア研究科 教授 小林博人
慶應アートセンター 教授 渡部葉子
政策・メディア研究科 特任助教 大沼徹
政策・メディア研究科 非常勤講師
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ドン・オキーフ(2021年度)